古文なぞなぞの用語と解説
古文で書いたなぞなぞ・クイズ。200 語のうち 101〜150 語目です。答えを隠して、問いから答えを思い出してから読むと、覚えやすくなります。
この問題集をタイピングで解く
影かげ|かげぼうし
問いひめぎみの、日のうららかにさしたる庭におりたちてあゆみたまへば、御身にそひてつゆはなれず、おなじさまにうごく黒きものあり。いかなるものにか。
【現代語訳】お姫様が、日がうららかに差している庭に降り立ってお歩きになると、お体に寄りそって少しも離れず、同じように動く黒いものがある。どんなものだろうか。
【ことば】うららかなり=のどかで明るい/さしたる(さす+たり)=差している(たり=存続)/おりたつ=庭に降りて立つ/たまへ(たまふ)=お〜になる(尊敬の補助動詞)/御身(おほんみ)=お体/そひ(そふ)=寄りそう/つゆ〜ず=少しも〜ない(呼応の副詞)/いかなるものにか=どんなものであろうか(下に「あらむ」が省かれている)
【ひとこと】光が体にさえぎられてできるのが影だよ。古文の「かげ」は「光」や「姿」の意味にもなるから気をつけてね。
名前なまえ|な
問いわが身にそへるものなれど、われはをさをさもちゐず、人こそあまたたびよべ。むまれてほどなく、おやのつけたまふものなり。これはなにぞ。
【現代語訳】自分の身についているものだけれど、自分はほとんど使わず、ほかの人こそ何度も呼ぶ。生まれて間もなく、親がおつけになるものだ。これは何か。
【ことば】そへる(そふ+り)=ついている(り=存続)/をさをさ〜ず=ほとんど〜ない(呼応の副詞)/もちゐ(もちゐる)=使う(上一段)/あまたたび=何度も/こそ〜よべ=係り結び(こそ→已然形)/むまれ=生まれ(「うまれ」の古い書き方)/ほどなく=間もなく/たまふ=お〜になる(尊敬の補助動詞)
【ひとこと】名前は自分のものなのに、使うのはほとんど他人なんだ。平安の女性は本名をめったに人に知らせなかったよ。
針はり|ぬいばり
問い目はひとつはべれど、ものをえ見ず。糸をとほして、きぬをぬふにもちゐる、ほそくちひさきものは、なにぞ。
【現代語訳】目は一つありますが、ものを見ることができない。糸を通して、着物を縫うのに使う、細くて小さいものは何か。
【ことば】はべれ(はべり)=あります(丁寧語)/ど=〜けれど(已然形につく)/え〜ず=〜できない(不可能。呼応の副詞)/とほし(とほす)=通す(歴史的仮名遣い)/きぬ=着物/ぬふ=縫う/もちゐる=使う/ちひさき=小さい
【ひとこと】糸を通す穴を「針の目」「めど」と言うから「目はあるのに見えない」なんだ。
時計とけい
問い顔はあれど口はなし。ながき針とみじかき針とをもちて、夜昼いとまなくめぐりつつ、人に時をしらするものあり。なにとかいふ。
【現代語訳】顔はあるけれど口はない。長い針と短い針とを持って、夜も昼も休みなく回りながら、人に時を知らせるものがある。何と言うか。
【ことば】あれど=あるけれど/ながき・みじかき=長い・短い(形容詞の連体形)/夜昼(よるひる)=夜も昼も/いとまなく=休むひまもなく/めぐり(めぐる)=回る/つつ=〜しながら(継続)/しらする(しらす)=知らせる(下二段の連体形)/なにとかいふ=何と言うか(か→連体形「いふ」の係り結び)
【ひとこと】文字盤を「顔」と見たなぞなぞだよ。平安の宮中では水時計(漏刻)で時を計っていたんだ。
風かぜ
問いすがたはつゆ見えはべらねど、をぎの葉をそよがし、雲をはこび、花をちらすものあり。なにぞ。
【現代語訳】姿は少しも見えませんが、荻の葉をそよそよと鳴らし、雲を運び、花を散らすものがある。何か。
【ことば】つゆ〜ず=少しも〜ない(呼応の副詞)/見え(見ゆ)=見える/はべら(はべり)=〜ます(丁寧語)/ね=打消「ず」の已然形/ど=〜けれど/をぎ=荻(水辺のすすきに似た草)/そよがす=そよそよと音を立てさせる/ちらす=散らす
【ひとこと】荻の葉の音は、和歌でよく「秋風が来た知らせ」としてよまれたんだよ。
鏡かがみ
問い女房の、けさうしたまふとてむかひたまへば、ゑめばかれもゑみ、まゆをひそむればかれもひそむ。されどものはえいはず。かかるものをば、なにとかいふ。
【現代語訳】女房が化粧なさろうとして向かいなさると、ほほえめばあちらもほほえみ、眉をしかめればあちらもしかめる。けれども物は言うことができない。このようなものを何と言うか。
【ことば】女房(にようばう)=宮仕えする女性/けさう=化粧(歴史的仮名遣い)/とて=〜しようとして/たまへ(たまふ)=尊敬の補助動詞/ゑめ(ゑむ)=ほほえむ/かれ=あれ・あの者/ひそむれ(ひそむ)=眉をしかめる(下二段の已然形)/え〜ず=〜できない/かかる=このような
【ひとこと】平安の鏡は金属をみがいた丸い銅鏡で、映り方はぼんやりしていたんだ。
ろうそく
問い火をともされて、わが身をやうやうほそめつつ、夜のやみをてらし、もえはつれば、あとかたもなくきゆるものあり。これをばなにとかいふ。
【現代語訳】火をともされて、自分の体をだんだん細くしながら、夜の闇を照らし、燃えきってしまうと、跡形もなく消えるものがある。これを何と言うか。
【ことば】ともさ(ともす)=火をつける/れ(る)=受身/やうやう=だんだん/ほそめ(ほそむ)=細くする(下二段)/つつ=〜しながら/もえはつれ(もえはつ)=燃えつきる(「はつ」=すっかり〜する)/ば=〜と(已然形+ば)/あとかたもなく=何も残さず/きゆる(きゆ)=消える(下二段の連体形)/をば=「を」を強めた言い方
【ひとこと】ろうそくは平安のころは大陸から来たとても貴重なものだったんだよ。
虹にじ
問い雨はれたるのちの空に、ななくさの色をつくしたるかけはしぞわたれる。されど、いかなる人もえわたらず。このかけはしはなにぞ。
【現代語訳】雨が晴れたあとの空に、七つの色を全部使った橋がかかっている。けれども、どんな人も渡ることができない。この橋は何か。
【ことば】はれたる(はる+たり)=晴れた/ななくさ=七種類/つくし(つくす)=残らず使う/かけはし=橋(もとは谷にかけた橋)/ぞ〜わたれる=係り結び(ぞ→連体形。「る」は存続の「り」)/わたる=かかる・渡る/いかなる=どんな/え〜ず=〜できない
【ひとこと】虹は太陽の光が雨つぶの中で曲がって分かれたものだよ。
山びこやまびこ|こだま
問いふかき山にわけいりて「やや」とよばひければ、すがたも見えぬものの、おなじことばをぞかへしける。この声をなにとかいふ。
【現代語訳】深い山に分け入って「おーい」と呼び続けたところ、姿も見えない者が、同じ言葉を返した。この声を何と言うか。
【ことば】わけいる=草木をかき分けて入る/やや=呼びかけの声「おい」/よばひ(よばふ)=何度も呼ぶ/ければ=〜したところ(けり已然形+ば)/見えぬ=見えない(ぬ=打消「ず」の連体形)/ものの=者が(この「の」は主語を表す)/ぞ〜ける=係り結び(ぞ→連体形)/かへす=返す
【ひとこと】昔の人は山の神や木の霊が返事をしていると考えて、「こだま(木霊)」とも呼んだんだ。
雪ゆき
問い冬ごもる空より、しろき花ぞちりくる。枝につもれど香もせず、春の日かげにあへなくきえぬ。この花はなにぞ。
【現代語訳】冬の空から、白い花が散ってくる。枝に積もるけれど香りもせず、春の日の光にあっけなく消えてしまった。この花は何か。
【ことば】冬ごもる=冬の間とじこもる/しろき=白い/ぞ〜ちりくる=係り結び(ぞ→連体形「くる」)/つもれ(つもる)+ど=積もるけれど/香(か)=香り/日かげ=日の光(「かげ」は光)/あへなく=あっけなく/きえ(きゆ)+ぬ=消えてしまった(ぬ=完了)
【ひとこと】和歌では雪を花に、花を雪に見立てることがとても多いんだよ。
月つき
問い「よひごとに かけてまたみつ ひかりかな もちのよにこそ まどかなりけれ」。この歌によめる、空なるものはなにぞ。
【現代語訳】毎晩、欠けてまた満ちる光であるよ。十五夜にこそまんまるになるのだなあ。この歌によまれている、空にあるものは何か。
【ことば】よひ=夜のはじめ/かけ(かく)=欠ける(下二段)/みつ=満ちる(四段の連体形)/かな=〜だなあ(詠嘆)/もちのよ=望月の夜・十五夜/こそ〜けれ=係り結び(こそ→已然形。けり=詠嘆)/まどかなり=まるい/よめる(よむ+り)=よんでいる/空なる=空にある(なり=存在)
【ひとこと】昔の暦は月の満ち欠けで日を数えたから、十五日ごろがいつも満月だったんだ。
傘かさ|あまがさ|からかさ
問い「あめふれば ひらきて人を おほへども はるればとぢて すみにこそふせ」。この歌のなぞのこたへはなにぞ。
【現代語訳】雨が降ると開いて人をおおうけれど、晴れると閉じて部屋のすみにこそ横になる。この歌のなぞの答えは何か。
【ことば】ふれ(ふる)+ば=降ると(已然形+ば=確定条件)/おほへ(おほふ)=おおう/ども=〜けれども/はるれ(はる)=晴れる(下二段の已然形)/とぢ(とづ)=閉じる(上二段)/こそ〜ふせ=係り結び(こそ→四段「ふす」の已然形)/ふす=横になる/こたへ=答え
【ひとこと】平安の貴族は雨の日、従者に大きな傘をさしかけさせたんだよ。
年とし|ねんれい|よわい
問いおきなのいふやう、「とれどもとれども、へることなく、かへりてつもりゆくものこそあれ。むつきごとにひとつづつとりはべる」となむ。これはなにぞ。
【現代語訳】おじいさんが言うことには、「取っても取っても減ることがなく、かえって積もっていくものがあるのだ。正月ごとに一つずつ取ります」ということだ。これは何か。
【ことば】おきな=おじいさん/いふやう=言うことには/ども=〜けれども/かへりて=かえって・反対に/こそあれ=係り結び(こそ→已然形「あれ」)/むつき=一月(正月)/はべる=〜ます(丁寧語)/となむ=〜ということだ(下の「いふ」が省かれた係り結び)
【ひとこと】昔は数え年で、正月が来るとみんな一つ年を取ったんだ。
涙なみだ
問い「うきときは そでのしがらみ せきもあへず うれしきにさへ こぼるるものを」。人の目よりいでて、かくこぼるるものはなにぞ。
【現代語訳】つらいときは、袖を柵にしてもせき止めきれない。うれしいときにまでこぼれるのになあ。人の目から出て、このようにこぼれるものは何か。
【ことば】うし=つらい/しがらみ=川の流れをせき止める柵(袖を柵にたとえた)/せく=せき止める/〜もあへず=〜しきれない/さへ=〜までも(添加)/こぼるる(こぼる)=こぼれる(下二段の連体形)/ものを=〜のになあ(詠嘆)/いで(いづ)=出る/かく=このように
【ひとこと】和歌では涙を「袖のしがらみ」「袖の露」とよく言いかえるんだよ。
夢ゆめ
問いよなよな、いねたる人のまくらがみにおとづれて、さまざまのことを見せ、あかつきにはあとなくさりぬるものあり。小町も「おもひつつ ぬればや人の 見えつらむ」とよみけり。これはなにぞ。
【現代語訳】毎晩、寝た人の枕もとに訪れて、いろいろなことを見せ、夜明け前には跡もなく去ってしまうものがある。小野小町も「あの人を思いながら寝たから、あの人が見えたのだろうか」とよんだ。これは何か。
【ことば】よなよな=毎晩/いね(いぬ)=寝る(下二段)/まくらがみ=枕もと/おとづれ(おとづる)=訪れる/あかつき=夜明け前/さりぬる(さる+ぬ)=去ってしまう(ぬ=完了の連体形)/ぬれ+ば=寝たので(已然形+ば)/や〜つらむ=係り結び(や=疑問。らむ=原因の推量)
【ひとこと】下の句は「夢と知りせば覚めざらましを(夢と知っていたら覚めなかったのに)」。まし=反実仮想だよ。
独楽こま
問いひもにまかれて地になげらるれど、たふるることなく、ひとところにてくるくるとまひつづけ、いきほひつくれば、やうやうかたぶきてふすもの。むつきのわらはのもてあそびものなり。これはなにぞ。
【現代語訳】ひもに巻かれて地面に投げられるけれど、倒れることなく、一か所でくるくると舞い続け、勢いがなくなると、だんだん傾いて横になるもの。正月の子どものおもちゃだ。これは何か。
【ことば】なげらるれ(なぐ+らる)=投げられる(らる=受身の已然形)/たふるる(たふる)=倒れる(下二段の連体形)/ひとところ=一か所/いきほひ=勢い/つくれ(つく)+ば=尽きると/やうやう=だんだん/かたぶく=傾く/ふす=横になる/わらは=子ども/もてあそびもの=おもちゃ
【ひとこと】高麗(朝鮮半島)を通って伝わったので「こま」と言い、平安のころは「こまつぶり」と呼んだんだ。
雷かみなり|いかずち
問い夏のゆふつかた、にはかに空かきくもり、ひかりみちて天もとどろに鳴りさわぐ。おそろしなどもおろかなり。いにしへ清涼殿におちかかりて人々をあまたうしなひしかば、菅原のおとどのたたりとぞささやきける。これはなにぞ。
【現代語訳】夏の夕方、急に空が一面に曇り、光が満ちて天もとどろくほどに鳴りさわぐ。恐ろしいなどと言うのでは足りない。昔、清涼殿に落ちて人々を大勢死なせたので、菅原の大臣(道真)のたたりだとささやき合った。これは何か。
【ことば】ゆふつかた=夕方/にはかに=急に/かきくもる=一面に曇る/とどろに=とどろくほどに/〜などもおろかなり=〜などと言っては言い足りない/うしなひ(うしなふ)=死なせる/しか(き)+ば=〜したので(き=過去の已然形)/おとど=大臣/ぞ〜ける=係り結び
【ひとこと】930年の清涼殿落雷事件だよ。これで道真は天神(雷の神)としてまつられるようになったんだ。
あくび
問い夜いたうふけて、うへの御前にさぶらふ人の、えもいはずねぶたげにて、口をおほきにあけてながき息をつきければ、かたへの人々もえたへで、つぎつぎにこのわざをぞしける。「なせそ」と制すれどとどまらず。このわざはなにぞ。
【現代語訳】夜がひどくふけて、天皇のおそばにお仕えする人が、何とも言えず眠そうで、口を大きく開けて長い息をついたので、そばの人々もがまんできないで、次々にこのしぐさをした。「するな」と止めるけれど止まらない。このしぐさは何か。
【ことば】いたう(いたく)=ひどく(ウ音便)/うへ=天皇/さぶらふ=お仕えする(謙譲語)/えもいはず=言いようもなく/ねぶたげなり=眠そうだ/かたへ=そば(の人)/え〜で=〜できないで(で=打消の接続)/ぞ〜ける=係り結び/な〜そ=〜するな(禁止。「せ」はサ変「す」の未然形)/制す=止める
【ひとこと】あくびは人に「うつる」ことで知られるよ。
琵琶湖びわこ
問いあふみのくにに、日の本にならびなくひろきみづうみあり。その名は、管絃のあそびにかきならす楽器ににたるかたちよりおこれりとぞ。このみづうみをば、なにとかまうす。
【現代語訳】近江の国に、日本でいちばん広い湖がある。その名前は、音楽の遊びでかき鳴らす楽器に似た形から起こったということだ。この湖を何と申すか。
【ことば】あふみ=近江(今の滋賀県)/日の本=日本/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/管絃(くわんげん)のあそび=楽器を合奏する遊び/かきならす=弦をかき鳴らす/おこれり(おこる+り)=起こった(り=完了)/とぞ=〜ということだ(結びが省かれた形)/をば=「を」の強め/まうす=申す(謙譲語)
【ひとこと】琵琶は平安貴族が弾いた弦楽器。湖の古い名は「淡海(あはうみ)」や「鳰(にほ)の海」だよ。
信濃川しなのがわ
問いゑちごのくにより北の海にそそぎいる、日の本にならびなくながき川はなにぞ。かみのながれをば、ちくまがはとぞまうしはべる。
【現代語訳】越後の国から北の海(日本海)に注ぎこむ、日本でいちばん長い川は何か。上流のほうを、千曲川と申します。
【ことば】ゑちご=越後(今の新潟県)/そそぎいる=注ぎこむ/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/かみ=川上・上流/ながれ=流れ/をば=「を」の強め/がは=川(歴史的仮名遣い)/ぞ〜はべる=係り結び(ぞ→連体形)/まうしはべる=申します(謙譲語+丁寧語)
【ひとこと】長野県(昔の信濃)では千曲川、新潟県に入ると信濃川と呼ぶんだよ。長さは367km。
北海道ほっかいどう
問い日の本のうちにて、ならびなくひろく、冬は雪いとふかく、いにしへは「えぞがしま」とよばれはべりし北のくにあり。いまの世の名はなにぞ。
【現代語訳】日本の中で、いちばん広く、冬は雪がとても深く、昔は「蝦夷が島」と呼ばれていた北の国がある。今の名は何か。
【ことば】日の本=日本/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/いと=とても/いにしへ=昔/えぞがしま=蝦夷が島(北の島の古い呼び名)/よばれ(よぶ+る)=呼ばれる(る=受身)/はべりし=〜ました(はべり=丁寧語、し=過去「き」の連体形)/いまの世=今の時代
【ひとこと】1869年に「北海道」と名づけられたんだ。面積は全国のおよそ5分の1だよ。
太平洋たいへいよう
問いこの世のうみのうちにならびなくひろく、日の本のひむがしに、はてしなくひろごれるうみあり。いまの世になにとかいふ。(「〜洋」の形で)
【現代語訳】この世の海の中でいちばん広く、日本の東に、果てしなく広がっている海がある。今の時代に何と言うか。(「〜洋」の形で)
【ことば】この世=世界/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/ひむがし=東(「ひがし」の古い形)/はてしなく=果てがなく/ひろごれる(ひろごる+り)=広がっている(り=存続)/いまの世=今の時代/なにとかいふ=係り結び(か→連体形)
【ひとこと】マゼランが航海中、波がおだやかだったので「平和な海」と名づけたと言われるよ。
エベレストえべれすと|ちょもらんま|さがるまーた
問いこの世にならびなくたかき山は、天竺の北につらなる、雪のきえせぬ山々のうちにありとききはべり。その山の名はなにぞ。
【現代語訳】世界でいちばん高い山は、インドの北に連なる、雪の消えない山々の中にあると聞いております。その山の名は何か。
【ことば】この世=世界/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/天竺(てんぢく)=インド/つらなる=連なる/きえせぬ=消えない(「消えす」+打消「ず」の連体形)/とききはべり=〜と聞いております(はべり=丁寧語)
【ひとこと】ヒマラヤ山脈のエベレストは8848m。チベットではチョモランマと呼ぶよ。
バチカン市国ばちかんしこく|ばちかん
問いこの世のくにのうちに、ならびなくちひさきくにあり。はるか西なるふるき都ローマのうちにこそあれ。きりすとの教への、いただきにたちたまふ人のおはします所なり。このくにはなにぞ。
【現代語訳】世界の国の中に、いちばん小さい国がある。はるか西にある古い都ローマの中にあるのだ。キリスト教の頂点にお立ちになる人(教皇)がいらっしゃる所だ。この国は何か。
【ことば】ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/ちひさき=小さい(歴史的仮名遣い)/西なる=西にある(なり=存在)/こそあれ=係り結び(こそ→已然形)/いただき=頂上・いちばん上/たちたまふ=お立ちになる(尊敬)/おはします=いらっしゃる(とても高い尊敬語)
【ひとこと】バチカン市国の広さは約0.44km²。東京ディズニーランドより小さいんだ。
シロナガスクジラしろながすくじら
問いこの世に生けるもののうちにならびなくおほきなるは、わたつみにすむいさななりけり。その身はあをみをおびたる灰の色なり。このいさなの名をば、なにとかいふ。
【現代語訳】世界に生きているものの中でいちばん大きいのは、海にすむ鯨であったよ。その体は青みを帯びた灰色だ。この鯨の名を何と言うか。
【ことば】生ける(生く+り)=生きている(り=存続)/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/わたつみ=海(もとは海の神)/いさな=鯨の古い言い方/なりけり=〜であったのだなあ(けり=詠嘆)/あをみ=青み/おびたる=帯びている/をば=「を」の強め
【ひとこと】シロナガスクジラは体長30m近くにもなる、地球の歴史でいちばん大きい動物だよ。
カスピ海かすぴかい
問いこの世のみづうみのうちにならびなくひろきは、名に「うみ」の文字をもてれど、まことは四方を陸にかこまれたるみづうみなり。もろこしよりなほ西のはてにありとか。このみづうみはなにぞ。
【現代語訳】世界の湖の中でいちばん広いのは、名前に「海」の字を持っているけれど、本当は四方を陸に囲まれた湖だ。中国よりもさらに西の果てにあるとかいう。この湖は何か。
【ことば】ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/もてれ(もつ+り)+ど=持っているけれど/まことは=本当は/四方(よも)=まわり全部/かこまれたる=囲まれている/もろこし=中国/なほ=さらに/とか=〜とかいうことだ
【ひとこと】カスピ海は日本の面積とほぼ同じ広さで、水は少ししょっぱいんだよ。
青函トンネルせいかんとんねる
問いみちのくと、えぞがしまとを、うみのそこにてむすべる、日の本にならびなくながき穴みちはなにぞ。くろがねのくるまこそ、そのうちをはしれ。
【現代語訳】東北地方と北海道とを、海の底で結んでいる、日本でいちばん長いトンネルは何か。鉄の車(列車)こそ、その中を走るのだ。
【ことば】みちのく=陸奥(東北地方。今の青森県もふくむ)/えぞがしま=北海道の古い呼び名/むすべる(むすぶ+り)=結んでいる(り=存続)/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/穴みち=穴の通り道(トンネル)/くろがね=鉄/こそ〜はしれ=係り結び(こそ→已然形)
【ひとこと】青函トンネルは約54km。青森の「青」と函館の「函」から名づけたんだ。
南極大陸なんきょくたいりく
問いこの世の大陸のうちにならびなくさむきは、地のはての南にありて、あつきこほりにおほはれたり。羽はあれどとばぬ鳥こそあまたすめ。この大陸はなにぞ。(「〜大陸」の形で)
【現代語訳】世界の大陸の中でいちばん寒いのは、地の果ての南にあって、厚い氷におおわれている。羽はあるけれど飛ばない鳥がたくさんすんでいる。この大陸は何か。(「〜大陸」の形で)
【ことば】ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/はて=果て/こほり=氷(歴史的仮名遣い)/おほはれ(おほふ+る)=おおわれる(る=受身)/たり=存続/あれど=あるけれど/とばぬ=飛ばない(ぬ=打消の連体形)/こそ〜すめ=係り結び(こそ→已然形)/あまた=たくさん
【ひとこと】南極ではマイナス89.2℃が観測されたよ。飛ばない鳥はペンギンだね。
万葉集まんようしゅう
問いいにしへ奈良のみやこのころ、家持の卿などのかかづらひたまひけむといはるる、この国にのこれる、ならびなくふるきうたの集あり。その名は「よろづのことのは」とも「よろづよ」ともいふとか。この集はなにぞ。
【現代語訳】昔、奈良の都のころ、大伴家持様などがかかわりなさったのだろうと言われる、この国に残るいちばん古い歌集がある。その名は「たくさんの言葉(歌)」とも「永遠の世」とも解くとかいう。この歌集は何か。
【ことば】卿(きやう)=身分の高い人への敬称/かかづらふ=かかわる/たまひ(たまふ)=尊敬/けむ=〜たのだろう(過去推量)/いはるる(いふ+る)=言われる(る=受身)/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/のこれる(のこる+り)=残っている/集(しふ)=歌集/よろづ=たくさん・一万/ことのは=言葉・和歌
【ひとこと】万葉集は約4500首。天皇から防人(さきもり)まで、いろいろな人の歌が入っているよ。
源氏物語げんじものがたり
問い一条の院の御時、中宮彰子にさぶらひし女房のかきける物語なり。ひかる君の恋とさかえと、そののち宇治のことまでを、いそぢあまりよつのまきにしるせり。この物語はなにぞ。(「〜物語」の形で)
【現代語訳】一条天皇の御代に、中宮彰子にお仕えした女房が書いた物語だ。光る君の恋と栄華と、その後の宇治の話までを、五十四の巻に書き記している。この物語は何か。(「〜物語」の形で)
【ことば】院(ゐん)=天皇・上皇/御時(おほんとき)=御代/中宮=天皇のきさき/さぶらひ(さぶらふ)=お仕えする(謙譲語)/し=過去「き」の連体形/ける=過去「けり」の連体形/ひかる君=光源氏/さかえ=栄華/いそぢあまりよつ=五十四/まき=巻/しるせり(しるす+り)=書き記している
【ひとこと】作者の紫式部は彰子に仕えていたんだ。最後の十帖は「宇治十帖」と呼ぶよ。
竹取物語たけとりものがたり
問いかの源氏の物語に「物語のいできはじめのおや」としるされたる、日の本にならびなくふるき物語なり。おきなの、ひかるたけのよより三寸ばかりなる人を見いでけるはなしぞかし。この物語はなにぞ。(「〜物語」の形で)
【現代語訳】あの源氏物語に「物語が生まれたはじめの祖先」と書かれた、日本でいちばん古い物語だ。おじいさんが、光る竹の節の間から三寸ほどの人を見つけた話だよ。この物語は何か。(「〜物語」の形で)
【ことば】かの=あの/いできはじめ=最初に生まれ出ること/おや=祖先・始まり/しるされたる(しるす+る+たり)=書かれている/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/よ=竹の節と節の間/三寸(さんずん)=約9cm/ばかり=〜くらい/見いで(見いづ)=見つけ出す/ぞかし=〜だよ(念押し)
【ひとこと】『源氏物語』の「絵合」の巻に出てくる言葉だよ。作者は分かっていないんだ。
関東平野かんとうへいや
問い坂東のやつのくにぐににまたがりて、とねがはのゆるゆるとながれ、月の入るべき山だになきむさしのの、はても見えずひろごれる、日の本にならびなくひろき野はなにぞ。(「〜平野」の形で)
【現代語訳】坂東(関東)の八か国にまたがって、利根川がゆったりと流れ、月が沈むはずの山さえない武蔵野が、果ても見えず広がっている、日本でいちばん広い平野は何か。(「〜平野」の形で)
【ことば】坂東(ばんどう)=今の関東地方/やつ=八つ/またがる=またがって広がる/とねがは=利根川(歴史的仮名遣い)/ゆるゆると=ゆったりと/入る=(月が)沈む/べき(べし)=当然「〜はずの」/だに=〜さえ(類推)/なき(なし)=ない(連体形)/むさしの=武蔵野/ひろごれる=広がっている(り=存続)/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)
【ひとこと】関東平野は約1万7000km²。武蔵野は、月が山でなく草の原に沈むと言われるほど広い野だったんだ。
金星きんせい|みょうじょう
問い『枕草子』に「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ」とあり。このゆふづつは、くれには西の空に、あかつきには東の空に、ひときはあかくかがやく。月をのぞきては、夜の空にこれにまさりてあかく見ゆるものなし。いまの世の名はなにぞ。(漢字二字で)
【現代語訳】『枕草子』に「星はすばる。ひこぼし。ゆうづつ」とある。このゆうづつは、夕暮れには西の空に、夜明け前には東の空に、ひときわ明るくかがやく。月を除いては、夜空でこれより明るく見えるものはない。今の名は何か。(漢字二字で)
【ことば】すばる=プレアデス星団/ひこぼし=牽牛星(わし座のアルタイル)/ゆふづつ=夕方に西の空で光る星(宵の明星)/くれ=日暮れ/あかつき=夜明け前/ひときは=ひときわ/のぞき(のぞく)=除く/まさり(まさる)=上回る・すぐれる/見ゆる(見ゆ)=見える(連体形)
【ひとこと】金星は「宵の明星」「明けの明星」とも呼ぶよ。本当は星(恒星)ではなく惑星なんだ。
万里の長城ばんりのちょうじょう
問いもろこしに、いにしへのみかどの、北のえびすのせめいるをふせがむとて、きづかせたまへるながきながきついぢあり。山をこえ谷をわたりて、よろづの里にもあまるとぞいひつたふる。これはなにぞ。(「〜の長城」の形で)
【現代語訳】中国に、昔の皇帝が、北の異民族が攻めこむのを防ごうとしてお築かせになった、長い長い土の塀がある。山をこえ谷を渡って、一万里よりも長いと言い伝えている。これは何か。(「〜の長城」の形で)
【ことば】もろこし=中国/みかど=皇帝/えびす=都から遠い地の異民族/むとて=〜しようとして(む=意志)/きづかせたまへる=お築かせになった(す=使役、たまふ=尊敬、る=完了「り」)/ついぢ=土の塀/よろづの里=一万里(「万里」を和語で言ったもの)/あまる=こえる/ぞ〜いひつたふる=係り結び(ぞ→連体形)
【ひとこと】秦の始皇帝が一つにつなげ、明の時代に今の形になったんだよ。
前方後円墳ぜんぽうこうえんふん
問いいづみのくに堺のわたりに、仁徳のみかどのみささぎとつたへらるる、日の本にならびなくおほきなるつかあり。まへはかどありてしりへはまろく、空より見ればかぎあなのごとし。かかるかたちのつかをばなにとかいふ。(漢字五字で)
【現代語訳】和泉の国の堺のあたりに、仁徳天皇のお墓と伝えられる、日本でいちばん大きい墓がある。前は角があって後ろは丸く、空から見ると鍵穴のようだ。このような形の墓を何と言うか。(漢字五字で)
【ことば】いづみ=和泉(今の大阪府南部)/わたり=あたり/ならびなく(ならびなし)=並ぶものがないほど(いちばん)/みかど=天皇/みささぎ=天皇のお墓/つたへらるる(つたふ+らる)=伝えられる(らる=受身の連体形)/つか=墓・塚/かど=角/しりへ=後ろ/まろし=丸い/ごとし=〜のようだ/かかる=このような
【ひとこと】大仙陵古墳(仁徳天皇陵)は長さ約486m。2019年に世界遺産になったよ。
きびだんご
問いもものうちよりいできたるをのこご、鬼うちにいでたつとき、おうなのてづからつくりたまひしだんごを、こしにつけけり。このだんごはなにぞ。
【現代語訳】桃の中から生まれ出た男の子が、鬼退治に出発するとき、おばあさんが自分の手でお作りになった団子を、腰につけた。この団子は何か。
【ことば】いできたる(いでく+たり)=生まれ出た/をのこご=男の子/鬼うち=鬼をこらしめること/いでたつ=出発する/おうな=おばあさん(歴史的仮名遣いでは「おうな」)/てづから=自分の手で/たまひし=〜なさった(たまふ=尊敬、し=過去)/けり=〜た(過去)
【ひとこと】きびだんごは、きび(黍)の粉で作った団子。岡山の昔の国名「吉備」とかけているとも言われるよ。
玉手箱たまてばこ
問いかめをたすけしつりびと、わたつみのそこなる宮よりかへるとき、乙姫よりたまはりしはこあり。あけたれば、しろきけぶりたちのぼりて、たちまちおきなとなりにけり。このはこはなにぞ。
【現代語訳】亀を助けた漁師が、海の底にある宮殿から帰るとき、乙姫からいただいた箱がある。開けたところ、白い煙が立ちのぼって、たちまちおじいさんになってしまった。この箱は何か。
【ことば】つりびと=漁師/わたつみ=海/そこなる=底にある(なり=存在)/たまはり(たまはる)=いただく(謙譲語)/し=過去「き」の連体形/あけたれば=開けたところ(已然形+ば)/けぶり=煙/たちまち=すぐに/おきな=おじいさん/なりにけり=なってしまった(ぬ=完了+けり)
【ひとこと】奈良時代の『丹後国風土記』では「玉匣(たまくしげ)」と呼ばれているよ。
打ち出の小槌うちでのこづち
問い一寸ばかりなるちひさきをのこのために、鬼のおとしたるつちを姫君のふりたまへば、をのこの身のたけ、たちまちおほきになりにけり。このたからはなにぞ。
【現代語訳】一寸くらいの小さい男のために、鬼が落とした槌をお姫様がお振りになると、男の背丈がたちまち大きくなってしまった。この宝物は何か。
【ことば】一寸(いつすん)=約3cm/ばかり=〜くらい/なる=〜である(なり=断定)/ちひさき=小さい/をのこ=男/つち=物をたたく道具(槌)/ふりたまへ+ば=お振りになると(たまふ=尊敬)/身のたけ=背の高さ/おほきなり=大きい/なりにけり=なってしまった
【ひとこと】打ち出の小槌は、振ると望みのものが出てくるという宝物だよ。
鉞まさかり|おの
問いあしがら山のきんとき、をさなきより力いとつよく、くまにまたがりて、肩にかつぎける、刃のひろくおほきなる、木をきる道具はなにぞ。
【現代語訳】足柄山の金時が、幼いころから力がとても強く、熊にまたがって、肩にかついでいた、刃の広く大きな、木を切る道具は何か。
【ことば】あしがら山=足柄山(今の神奈川県と静岡県のさかい)/きんとき=坂田金時(金太郎)/をさなき=幼い/より=〜から/いと=とても/またがる=足を開いて乗る/かつぎ(かつぐ)=かつぐ/ける=〜た(過去の「けり」の連体形)
【ひとこと】まさかりは刃の幅が広い大きな斧だよ。金太郎はのちに源頼光の家来になったんだ。
桜さくら
問いこころすなほなるおきな、かれたる木にのぼりて灰をまきたまへば、たちまち花さきみちて、殿もいみじうよろこびたまひけり。その花はなにぞ。
【現代語訳】正直なおじいさんが、枯れた木に登って灰をおまきになると、たちまち花が咲きあふれて、殿様もとても喜びなさった。その花は何か。
【ことば】こころすなほなり=正直だ・素直だ/おきな=おじいさん/かれたる(かる+たり)=枯れた/たまへ+ば=〜なさると(尊敬)/たちまち=すぐに/さきみつ=咲きあふれる/殿(との)=殿様/いみじう(いみじく)=とても(ウ音便)/たまひけり=〜なさった
【ひとこと】「花咲かじいさん」の話だよ。平安の和歌で「花」とだけ言うと、ふつう桜のことなんだ。
柿かき
問いかにのうゑしたねより木そだちて実なりければ、さるその木にのぼり、うれたるをばおのれくらひ、いまだあをき実をぞかにになげつけける。この実はなにぞ。
【現代語訳】蟹が植えた種から木が育って実がなったので、猿がその木に登り、熟したのは自分で食べ、まだ青い実を蟹に投げつけた。この実は何か。
【ことば】うゑ(うう)=植える(ワ行下二段)/し=過去「き」の連体形/なりければ=実ったので(已然形+ば=原因)/うれたる(うる+たり)=熟した/をば=「を」の強め/おのれ=自分/くらふ=食べる/いまだ=まだ/あをき=青い/ぞ〜ける=係り結び(ぞ→連体形)
【ひとこと】「さるかに合戦」の話だよ。蟹は最初、おにぎりと種を交換したんだ。
兎うさぎ
問いおうなをあやめしたぬきをこらしめむとて、せおへるしばに火をつけ、つひにはつちの舟にのせてしづめしけものはなにぞ。
【現代語訳】おばあさんを殺したたぬきをこらしめようとして、背負っている柴に火をつけ、最後には泥の舟に乗せて沈めた獣は何か。
【ことば】おうな=おばあさん/あやめ(あやむ)=殺す・傷つける/し=過去「き」の連体形/むとて=〜しようとして(む=意志)/せおへる(せおふ+り)=背負っている(り=存続)/しば=たきぎにする小枝/つひに=最後に/つち=土・泥/しづめ(しづむ)=沈める(下二段)
【ひとこと】「かちかち山」の話だよ。火打ち石の「かちかち」という音が題になっているんだ。
鬼おに
問いほほにこぶあるおきな、山にて夜、つのおひたるものどものさかもりするにいでてまひければ、いみじうめでられて、そのこぶをぞとられにける。このさかもりせしものどもはなにぞ。
【現代語訳】頬にこぶのあるおじいさんが、山で夜、角の生えた者たちが酒盛りをしているところに出て舞ったところ、とてもほめられて、そのこぶを取られてしまった。この酒盛りをした者たちは何か。
【ことば】おひ(おふ)=生える/たる=存続「たり」の連体形/ものども=者たち/さかもり=酒盛り・宴会/まひければ=舞ったところ/いみじう=とても/めで(めづ)=ほめる・感心する/られ(らる)=受身/ぞ〜にける=係り結び(ぬ=完了、ける=連体形)
【ひとこと】鎌倉時代の『宇治拾遺物語』にも「こぶとりじいさん」の話があるよ。
鶴つる
問いおきなにたすけられし鳥、をとめのすがたとなりてとぶらひきて、おのが羽をぬきてはたをおりけり。「なのぞきたまひそ」といひしを、のぞかれて、空へとびさりぬ。この鳥はなにぞ。
【現代語訳】おじいさんに助けられた鳥が、娘の姿になって訪ねて来て、自分の羽を抜いて布を織った。「のぞかないでください」と言ったのに、のぞかれて、空へ飛び去ってしまった。この鳥は何か。
【ことば】られ(らる)=受身/し=過去の連体形/をとめ=若い娘/とぶらひ(とぶらふ)=訪ねる/おのが=自分の/はたをおる=機(はた)で布を織る/な〜そ=〜しないで(禁止。間に連用形が入る)/たまひ=尊敬/を=〜のに(逆接)/さりぬ=去ってしまった(ぬ=完了)
【ひとこと】「鶴の恩返し」だよ。「のぞくな」と言われたのにのぞいてしまう話は、昔話によくある形なんだ。
ガラスの靴がらすのくつ
問いままははにしひたげられしむすめ、あやしきわざする女のたすけにて、とつくにの宮のうたげにまゐりしが、夜半のかねにいそぎかへるとて、すきとほれるくつをかたかたおとしけり。そのくつはなにぞ。(「〜の靴」の形で)
【現代語訳】継母にいじめられた娘が、ふしぎな術を使う女の助けで、外国の宮殿の宴に参上したが、真夜中の鐘に急いで帰ろうとして、すき通った靴を片方落とした。その靴は何か。(「〜の靴」の形で)
【ことば】ままはは=継母/しひたげ(しひたぐ)=いじめる/られ(らる)=受身/あやしきわざ=ふしぎな術(魔法)/とつくに=外国/うたげ=宴会(舞踏会)/まゐり(まゐる)=参上する(謙譲語)/夜半(よは)=真夜中/とて=〜しようとして/すきとほれる=すき通っている/かたかた=片方
【ひとこと】「シンデレラ」だよ。ガラスの靴はペローがまとめた話に出てくるんだ。
りんご
問いままははのきさき、ものうりのおうなに身をやつして、はだへしろき姫に、毒入れたるあかき木の実をまゐらせけり。姫ひとくちめして、たふれふしたまひぬ。この木の実はなにぞ。
【現代語訳】継母のお妃が、物売りのおばあさんにみすぼらしく姿を変えて、肌の白い姫に、毒を入れた赤い木の実をさしあげた。姫は一口召し上がって、倒れてしまわれた。この木の実は何か。
【ことば】きさき=お妃/おうな=おばあさん/身をやつす=わざとみすぼらしい姿に変える/はだへ=肌/まゐらせ(まゐらす)=さしあげる(謙譲語)/めし(めす)=召し上がる(尊敬語)/たふれふす=倒れて横になる/たまひぬ=〜なさってしまった(尊敬+完了)
【ひとこと】「白雪姫」だよ。グリム童話では、姫はこびとたちの家でりんごを食べさせられるんだ。
狼おおかみ
問いあかきづきんのめのわらはにさきだちて、おほばのいへにゆき、おほばをのみてのち、そのきぬをきてふしどにふし、めのわらはをもまちかまへたりけるけものはなにぞ。
【現代語訳】赤い頭巾の女の子より先に、おばあさんの家に行き、おばあさんを飲みこんだあと、その着物を着て寝床に横になり、女の子をも待ちかまえていた獣は何か。
【ことば】づきん=頭巾(歴史的仮名遣い)/めのわらは=女の子/さきだつ=先に行く/おほば=祖母/のみ(のむ)=飲みこむ/きぬ=着物/ふしど=寝床/ふす=横になる/まちかまへ(まちかまふ)=待ちかまえる(下二段)/たりける=〜ていた(存続+過去の連体形)
【ひとこと】「赤ずきん」だよ。グリム童話では、猟師が狼のおなかから二人を助け出すんだ。
孫悟空そんごくう|ごくう
問い三蔵法師にしたがひたてまつりて、天竺へみのりのふみをとりにゆきしものどものうち、石よりうまれ、如意棒をつかひ、雲にのりてとびかける猿はたれぞ。
【現代語訳】三蔵法師にお供して、インドへお経を取りに行った者たちのうち、石から生まれ、如意棒を使い、雲に乗って飛びまわる猿はだれか。
【ことば】したがひ(したがふ)=お供する/たてまつり(たてまつる)=〜申し上げる(謙譲の補助動詞)/天竺(てんぢく)=インド/みのり=仏の教え/ふみ=書物(ここではお経)/ものども=者たち/とびかける=空を飛びまわる/たれ=だれ
【ひとこと】中国の『西遊記』の主人公だよ。仲間は猪八戒(ちょはっかい)と沙悟浄(さごじょう)なんだ。
大国主命おおくにぬしのみこと|おおくにぬし|おおくにぬしのかみ
問いいなばのくにに、わにをあざむきて衣をはがれ、なきふせるうさぎに、まみづにて身をあらひ、がまのほにくるまるべしとをしへて、たすけたまひし神は、いづれの神にかおはしましけむ。
【現代語訳】因幡の国で、ワニ(サメ)をだまして皮をはがれ、泣き伏していたうさぎに、真水で体を洗い、蒲の穂にくるまるのがよいと教えて、お助けになった神は、どの神でいらっしゃったのだろうか。
【ことば】いなば=因幡(今の鳥取県東部)/わに=サメ/あざむく=だます/衣(ころも)=ここでは毛皮/なきふせる(なきふす+り)=泣き伏している/まみづ=真水/べし=〜するのがよい(適当)/いづれ=どの/か〜けむ=係り結び(か→連体形。けむ=過去推量)/おはしまし(おはします)=いらっしゃる(とても高い尊敬語)
【ひとこと】『古事記』の「因幡の白兎」だよ。この神は出雲大社にまつられているんだ。
須佐之男命すさのおのみこと|すさのお
問いたかまのはらをおはれたまひて、出雲のくにに下りたまひぬ。かしらもをもやつあるをろちありて、としごとにむすめをくらひけり。これにつよき酒をのませ、ゑひふしたるところをきりたまひし神はたれぞ。
【現代語訳】高天原を追い出されなさって、出雲の国にお下りになった。頭も尾も八つある大蛇がいて、毎年娘を食べていた。これに強い酒を飲ませ、酔いつぶれたところをお切りになった神はだれか。
【ことば】たかまのはら=高天原(神々の住む天上の国)/おはれ(おふ+る)=追い出される(る=受身)/たまひ(たまふ)=尊敬/下り(くだる)=下る/たまひぬ=〜なさった(ぬ=完了)/かしら=頭/を=尾/をろち=大蛇(歴史的仮名遣い)/としごとに=毎年/ゑひふす=酔いつぶれる
【ひとこと】ヤマタノオロチ退治だよ。この神は天照大神(あまてらすおおみかみ)の弟なんだ。