古文なぞなぞの用語と解説

古文で書いたなぞなぞ・クイズ。200 語のうち 151〜200 語目です。答えを隠して、問いから答えを思い出してから読むと、覚えやすくなります。

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キリギリスきりぎりす

問いとつくにのたとへものがたりに、夏のほど、ありどもはあせをながして冬のかてをたくはへけるに、かの虫はひとりうたひあそびてのみくらし、冬になりてありのもとにかてをこひにゆきけるとなむ。この国にては「ぎっちょん」となくといはるるこの虫はなにぞ。

【現代語訳】外国のたとえ話で、夏の間、アリたちは汗を流して冬の食べ物をたくわえたのに、あの虫はひとりで歌い遊んでばかり暮らし、冬になってアリのところに食べ物をもらいに行ったということだ。この国では「ギッチョン」と鳴くと言われるこの虫は何か。 【ことば】とつくに=外国/たとへものがたり=たとえ話(寓話)/ほど=間/かて=食べ物/たくはへ(たくはふ)=たくわえる/に=〜のに(逆接)/のみ=〜ばかり/こふ=求める/となむ=〜ということだ(下の「いふ」が省かれた係り結び)/いはるる(いふ+る)=言われる(る=受身の連体形) 【ひとこと】もとのイソップでは「セミ」だよ。平安の「きりぎりす」は今のコオロギのことなんだ。

亀かめ

問いあしときうさぎと、あゆみいとおそきものと、山のふもとまでかけくらべしけるに、うさぎはあなづりてみちのほとりにうちねたりしかば、おそきものこそさきにつきにけれ。「鶴は千年」とならべて、よろづよのよはひをたたへらるるものなり。これはなにぞ。

【現代語訳】足の速いうさぎと、歩みがとてもおそいものとが、山のふもとまで競走したところ、うさぎは見くびって道のそばでちょっと寝てしまったので、おそいもののほうが先に着いたのだった。「鶴は千年」と並べて、一万年の寿命をほめたたえられるものだ。これは何か。 【ことば】とし(疾し)=速い/かけくらべ=競走/あなづる=見くびる・ばかにする/ほとり=そば/うちね(うちぬ)=ちょっと寝る/たりしかば=〜ていたので(しか=過去「き」の已然形+ば)/こそ〜にけれ=係り結び(こそ→已然形)/よろづよ=一万年/よはひ=年齢・寿命/らるる=受身 【ひとこと】イソップの「ウサギとカメ」だよ。「鶴は千年、亀は万年」は長生きのおめでたい言葉なんだ。

ニワトリにわとり

問いあかつきごとにこゑたかくなきて、人に夜のあくるをつぐる鳥あり。かしらにはあかきかむりのごときものをいただけり。『伊勢物語』には「くたかけ」とののしられけり。この鳥はなにぞ。

【現代語訳】夜明け前ごとに声高く鳴いて、人に夜が明けることを知らせる鳥がいる。頭には赤い冠のようなものをのせている。『伊勢物語』では「くたかけ(ばか鳥)」と悪口を言われた。この鳥は何か。 【ことば】あかつき=夜明け前/こゑ=声(歴史的仮名遣い)/あくる(あく)=明ける(下二段の連体形)/つぐる(つぐ)=知らせる(下二段の連体形)/かしら=頭/かむり=冠/ごとき=〜のような/いただけ(いただく+り)=頭にのせている/くたかけ=ニワトリをののしって言う語/ののしら(ののしる)+れ=悪く言われる 【ひとこと】伊勢物語の女は、恋人が早く帰ってしまったのを鳴いたニワトリのせいにして怒ったんだ。

ウナギうなぎ

問い夏やせによしとて、大伴の家持の卿も「とりめせ」と歌によみたまひし、ほそながくぬめれるうをはなにぞ。いにしへは「むなぎ」ともいひけり。

【現代語訳】夏やせによいといって、大伴家持様も「とって召し上がれ」と歌におよみになった、細長くぬるぬるした魚は何か。昔は「むなぎ」とも言った。 【ことば】夏やせ=夏に体がやせること/よし=よい/とて=〜といって/卿(きやう)=身分の高い人への敬称/めせ(めす)=召し上がれ(尊敬語の命令形)/よみ(よむ)=和歌を作る/たまひし=〜なさった(尊敬+過去)/ぬめれる(ぬめる+り)=ぬるぬるしている/うを=魚/むなぎ=ウナギの古い言い方 【ひとこと】『万葉集』の歌で、やせた友だちをからかって「むなぎ取り食(め)せ」とよんだんだ。

ツバメつばめ

問い春になれば南のくによりわたりきて、人の家ののきに泥もて巣をつくり、秋にはかへりさる鳥あり。かぐや姫の、この鳥のもたる子安の貝をとりてこよとのたまひしことも名だかし。この鳥はなにぞ。

【現代語訳】春になると南の国から渡って来て、人の家の軒に泥で巣を作り、秋には帰っていく鳥がいる。かぐや姫が、この鳥の持っている子安貝を取って来いとおっしゃったことも有名だ。この鳥は何か。 【ことば】なれ+ば=なると(已然形+ば)/のき=軒/もて=〜で(「もちて」のつまった形)/かへりさる=帰って去る/もたる(もつ+たり)=持っている/子安の貝=安産のお守りになる貝/こよ(く)=来い(カ変の命令形)/のたまひ(のたまふ)=おっしゃる(尊敬語)/名だかし=有名だ 【ひとこと】『竹取物語』では「つばくらめ」と言うよ。石上の中納言はこの貝を取ろうとして落ちてしまったんだ。

トンボとんぼ

問い秋の野にむれとび、おほきなる目と、すきとほれるよつの羽とをもちて、さをのさきにとまる虫はなにぞ。いにしへは「あきつ」とぞいひける。日の本をも「あきつしま」とよびけり。

【現代語訳】秋の野に群れて飛び、大きな目と、すき通った四枚の羽とを持って、竿の先に止まる虫は何か。昔は「あきつ」と言った。日本のことも「あきつしま」と呼んだ。 【ことば】むれとぶ=群れて飛ぶ/おほきなる=大きな/すきとほれる(すきとほる+り)=すき通っている/よつ=四つ/さを=竿(歴史的仮名遣い)/あきつ=トンボの古い言い方/ぞ〜ける=係り結び(ぞ→連体形)/あきつしま=日本の古い呼び名 【ひとこと】神武天皇が国を見て「トンボが交尾しているような形だ」と言ったので「あきつしま」と呼んだという話があるよ。

シカしか

問い奈良の春日の社にては、神の御使ひとてかしづかるるけものあり。「おく山に もみぢふみわけ なく…の こゑきくときぞ 秋はかなしき」とよまれけり。このけものはなにぞ。

【現代語訳】奈良の春日大社では、神のお使いとして大切にされる獣がいる。「奥山で紅葉を踏み分けて鳴く…の声を聞くときこそ、秋は悲しく感じられる」とよまれた。この獣は何か。 【ことば】社(やしろ)=神社/御使ひ(みつかひ)=神のお使い/とて=〜として/かしづか(かしづく)=大切に世話をする/るる(る)=受身の連体形/もみぢ=紅葉/ふみわけ(ふみわく)=踏み分ける/こゑ=声/ぞ〜かなしき=係り結び(ぞ→形容詞の連体形) 【ひとこと】百人一首の猿丸大夫の歌だよ。秋に雄の鹿は妻を恋しがって鳴くと考えられたんだ。

コイこい

問いもろこしのはげしきたきをのぼりおほせたるうをは、竜となるといひつたへたり。端午のせちには、このうをのかたちしたるのぼりをぞたつる。このうをはなにぞ。

【現代語訳】中国の流れの激しい滝を登りきった魚は、竜になると言い伝えている。端午の節句には、この魚の形をしたのぼりを立てる。この魚は何か。 【ことば】もろこし=中国/はげしき=激しい/のぼりおほせ(おほす)=最後まで登りきる(「〜おほす」=やりとげる)/たる=完了「たり」の連体形/うを=魚/いひつたへたり=言い伝えている/せち=節(季節の祭りの日)/ぞ〜たつる=係り結び(ぞ→下二段「たつ」の連体形) 【ひとこと】これが「登竜門」という言葉のもとだよ。鯉のぼりは江戸時代に広まったんだ。

ライオンらいおん|しし

問いとつくにのひろき野にすみ、をすはくびのまはりにゆたかなるたてがみをもてり。もろもろのけもののきみとぞよばるる。社のまへなるこまいぬも、このけものにかたどれりとか。このけものはなにぞ。

【現代語訳】外国の広い野にすみ、雄は首のまわりにたっぷりしたたてがみを持っている。すべての獣の王と呼ばれる。神社の前にある狛犬も、この獣の形をまねているとかいう。この獣は何か。 【ことば】とつくに=外国/をす=雄/ゆたかなる=たっぷりした/もてり(もつ+り)=持っている(り=存続)/もろもろ=あらゆる/きみ=王・主君/ぞ〜るる=係り結び(る=受身の連体形)/まへなる=前にある(なり=存在)/かたどれ(かたどる)+り=形をまねている/とか=〜とかいう 【ひとこと】ライオンは昔の日本では「獅子(しし)」と呼ばれたよ。獅子舞の「獅子」もライオンがもとなんだ。

クモくも

問いやつのあしをもちて、のきのすみなどにほそき糸もてあみをはり、かかれる虫をとらへてくらふものはなにぞ。歌には「ささがに」ともよまる。あしたにはそのあみに露ぞ玉とひかる。

【現代語訳】八本の足を持って、軒のすみなどに細い糸で網を張り、ひっかかった虫を捕まえて食べるものは何か。和歌では「ささがに」ともよまれる。朝にはその網に露が玉のように光る。 【ことば】やつ=八つ/もて=〜で(「もちて」のつまった形)/かかれる(かかる+り)=ひっかかっている/とらへ(とらふ)=捕まえる(下二段)/くらふ=食べる/ささがに=クモの別名(和歌の言葉)/よまる(よむ+る)=よまれる(る=受身)/あした=朝(「明日」ではない)/ぞ〜ひかる=係り結び(ぞ→連体形) 【ひとこと】クモは虫ではなく、足が8本の別のなかまだよ。「ささがにの」は「くも」にかかる枕詞なんだ。

キツネきつね

問いいなりの社に神の御使ひとしてまつられ、人をばかすともいはるるけものはなにぞ。好むものはあぶらあげなりといひつたへたり。安倍晴明の母は、このけものの化けたる「くずのは」なりともいふ。

【現代語訳】稲荷神社に神のお使いとしてまつられ、人をだますとも言われる獣は何か。好物は油揚げだと言い伝えている。安倍晴明の母は、この獣が化けた「葛の葉」だったとも言う。 【ことば】社(やしろ)=神社/御使ひ(みつかひ)=神のお使い/まつら(まつる)+れ=まつられる(る=受身)/ばかす=だます・化かす/いはるる(いふ+る)=言われる/好む=好きである/いひつたへたり=言い伝えている/化けたる=化けた/くずのは=伝説の女性の名 【ひとこと】稲荷のお使いのキツネの好物だから、油揚げのお寿司を「いなりずし」と言うんだよ。

カイコかいこ

問いくはの葉をはみてそだち、やがてしろきまゆをつくる虫あり。そのまゆよりこそ、きぬの糸はとりけれ。かの虫めづる姫君も、人の着るきぬは、この虫のまだ羽つかぬにしいだすものぞとのたまひけり。この虫はなにぞ。

【現代語訳】桑の葉を食べて育ち、やがて白い繭を作る虫がいる。その繭からこそ、絹の糸は取ったのだ。あの虫を愛する姫君も、人の着る絹は、この虫がまだ羽が生えないうちに作り出すものだとおっしゃった。この虫は何か。 【ことば】くは=桑(歴史的仮名遣い)/はみ(はむ)=食べる/やがて=そのうちに/まゆ=繭/こそ〜けれ=係り結び(こそ→已然形)/きぬ=絹/めづる(めづ)=かわいがる・愛する/羽つかぬ=羽が生えていない/しいだす=作り出す/のたまひ(のたまふ)=おっしゃる(尊敬語) 【ひとこと】『堤中納言物語』の「虫めづる姫君」は、毛虫をかわいがる変わり者のお姫様の話だよ。

ホトトギスほととぎす

問い「うのはなの さけるかきねに きなきつつ なつをつぐなる とりぞゆかしき」。さつきのやみに、ひとこゑなきてすぎゆくを、人々いもねずまちわびけり。この鳥はなにぞ。

【現代語訳】卯の花が咲いている垣根に来て鳴きながら、夏を告げているらしい鳥は心ひかれることだ。五月の闇夜に、一声鳴いて通りすぎていくのを、人々は寝もしないで待ちくたびれた。この鳥は何か。 【ことば】うのはな=卯の花(初夏に白く咲く)/さける(さく+り)=咲いている/きなく=来て鳴く/つつ=〜しながら/つぐなる=告げているらしい(なり=声を聞いて推しはかる伝聞・推定。終止形につく)/ぞ〜ゆかしき=係り結び(ぞ→連体形)/ゆかし=心ひかれる/さつき=陰暦五月/いもねず=寝もしないで(い=眠り)/まちわぶ=待ちくたびれる 【ひとこと】平安の人はホトトギスの初音を聞くため、夜通し起きて待ったんだよ。

サケさけ|しゃけ

問い川にうまれてうみにくだり、いくとせをへてのち、またおのがうまれし川にぞかへりきて子をうみける。身はあかみをおびたるうをなり。ゑちご・しなのなどのくによりみかどにたてまつりけり。このうをはなにぞ。

【現代語訳】川に生まれて海に下り、何年かたったあと、また自分の生まれた川に帰ってきて卵を産んだ。身は赤みを帯びた魚だ。越後・信濃などの国から天皇に献上した。この魚は何か。 【ことば】くだり(くだる)=下る/いくとせ=何年/へ(ふ)=経る・たつ(下二段)/おのが=自分の/ぞ〜ける=係り結び(ぞ→連体形)/あかみ=赤み/おびたる=帯びている/ゑちご・しなの=越後(新潟県)・信濃(長野県)/みかど=天皇/たてまつり(たてまつる)=さしあげる(謙譲語) 【ひとこと】平安時代の決まりをまとめた『延喜式』にも、鮭を都に納めることが書かれているよ。

カタツムリかたつむり|でんでんむし|まいまい

問いさみだれのころ、あぢさゐの葉のうへを、家をせおひてゆるゆるとはひ、つのをいだしつひきいれつ、たゆまずあゆむものあり。『梁塵秘抄』には「まへまへ」とうたひはやされけり。これはなにぞ。

【現代語訳】梅雨のころ、あじさいの葉の上を、家を背負ってゆっくりはい、角を出したり引っこめたりして、休まず進むものがいる。『梁塵秘抄』では「舞え舞え」と歌ではやされた。これは何か。 【ことば】さみだれ=五月雨(今の梅雨)/あぢさゐ=あじさい(歴史的仮名遣い)/せおふ=背負う/ゆるゆると=ゆっくり/はひ(はふ)=はう/いだし(いだす)=出す/〜つ〜つ=〜たり〜たり(完了「つ」を並べる)/たゆまず=休まず/まへ(まふ)=舞え(命令形)/はやさ(はやす)+れ=はやしたてられる 【ひとこと】平安の終わりの歌謡集にある「舞へ舞へ蝸牛(かたつぶり)」という歌だよ。「かたつぶり」はカタツムリの古い呼び名なんだ。

カメレオンかめれおん

問いとつくにの木の枝にすみ、まはりの色にしたがひて、おのが身の色をさまざまにかへ、左右の目をおのおのことにうごかし、ながき舌をさとのばして虫をとるものはなにぞ。

【現代語訳】外国の木の枝にすみ、まわりの色に合わせて、自分の体の色をいろいろに変え、左右の目をそれぞれ別々に動かし、長い舌をさっとのばして虫を取るものは何か。 【ことば】とつくに=外国/まはり=まわり(歴史的仮名遣い)/したがひ(したがふ)=合わせる・従う/おのが=自分の/さまざまに=いろいろに/左右(さう)=左と右/おのおの=それぞれ/ことに(異なり)=別々に/さと=さっと・すばやく 【ひとこと】カメレオンの舌は体と同じくらい長いよ。色は気分や温度でも変わるんだ。

ナマズなまず

問いぬまや川のそこにすみ、口のほとりにながきひげあるうをあり。いにしへの人は、このうをの地のそこにてあばるればなゐふるとて、鹿島の神のかなめの石もておさへたまふといひつたへけり。これはなにぞ。

【現代語訳】沼や川の底にすみ、口のそばに長いひげのある魚がいる。昔の人は、この魚が地の底で暴れると地震が起こると言って、鹿島の神が要石で押さえていらっしゃると言い伝えた。これは何か。 【ことば】ほとり=そば/うを=魚/いにしへ=昔/あばるれ(あばる)+ば=暴れると(已然形+ば)/なゐ=地震(「なゐふる」=地震が起こる)/とて=〜と言って/かなめの石=要石(鹿島神宮にある石)/もて=〜で/おさへ(おさふ)=押さえる/たまふ=尊敬 【ひとこと】『方丈記』にも「なゐ」として大地震が書かれているよ。ナマズの言い伝えは江戸時代に広まったんだ。

モグラもぐら

問い日のひかりをいとひて、つねにつちのうちにすみ、おほきなる手をすきのごとくつかひてみちをほりすすみ、みみずをこのみてくらふけものあり。目はいとかすかなり。いかなるけものにか。

【現代語訳】日の光をいやがって、いつも土の中にすみ、大きな手を鋤のように使って道を掘り進み、ミミズを好んで食べる獣がいる。目はほとんど見えない。どんな獣だろうか。 【ことば】いとひ(いとふ)=いやがる・きらう/つねに=いつも/おほきなる=大きな/すき=鋤(土を掘りおこす道具)/ごとく=〜のように/このみ(このむ)=好む/くらふ=食べる/いと=とても/かすかなり=ぼんやりしている/いかなるけものにか=どんな獣であろうか(下に「あらむ」が省かれている) 【ひとこと】モグラは「土竜」とも書くよ。昔は「うごろもち」とも呼ばれたんだ。

障子しょうじ

問い木のわくにしろき紙をはりて、日のひかりをやはらかにとほし、よこにひきてあけたてする戸はなにぞ。わらはの指にてあなをあけらるることもありけり。

【現代語訳】木の枠に白い紙を張って、日の光をやわらかに通し、横に引いて開け閉めする戸は何か。子どもの指で穴を開けられることもあった。 【ことば】わく=枠/はり(はる)=張る/ひかり=光/やはらかに=やわらかに(歴史的仮名遣い)/とほし(とほす)=通す/あけたて=開け閉め/わらは=子ども/らるる(らる)=受身の連体形/ありけり=あった(けり=過去) 【ひとこと】平安時代の「障子」は部屋をしきる建具全体のことで、紙を張って光を通すのは「明かり障子」と呼んだんだ。

畳たたみ

問いゐぐさをあみてつくり、ざしきのゆかにしきつめはべる、ほのかにかをるものはなにぞ。そのかずにてへやのひろさをいひあらはすなり。枕草子には「かうらいべり」のものをめでたしとかけり。

【現代語訳】藺草を編んで作り、座敷の床に敷きつめる、ほのかに香るものは何か。その数で部屋の広さを言い表すのだ。枕草子には「高麗縁」のものをすばらしいと書いている。 【ことば】ゐぐさ=藺草(歴史的仮名遣い)/しきつめはべる=敷きつめます(はべり=丁寧語)/ほのかに=かすかに/かをる=香る(歴史的仮名遣い)/いひあらはす=言い表す/かうらいべり=高麗縁(白地に黒い模様のふち)/めでたし=すばらしい/かけり(かく+り)=書いている 【ひとこと】平安時代は板の間に、座る所だけ畳を置いていたんだ。部屋中に敷きつめるのは室町時代からだよ。

豆腐とうふ

問いまめをすりつぶしてにて、そのしるににがりをいれてかためたる、しろくやはらかなるくひものはなにぞ。よつかどにきりて、みそしるにもいれはべり。

【現代語訳】大豆をすりつぶして煮て、その汁ににがりを入れて固めた、白くてやわらかい食べ物は何か。四角に切って、みそ汁にも入れます。 【ことば】まめ=ここでは大豆/すりつぶし(すりつぶす)=すりつぶす/にて(にる)=煮て/しる=汁/かためたる(かたむ+たり)=固めた(かたむ=下二段)/やはらかなる=やわらかい(連体形)/くひもの=食べ物/よつかど=四つの角(四角)/はべり=〜ます(丁寧語) 【ひとこと】豆腐は中国から伝わったよ。豆乳ににがりを入れて固めて作るんだ。

門松かどまつ

問いむつき、年神をむかへたてまつらむとて、家のいでいりの口の左右にたてはべる、ときはなる木とたけとをくみたるかざりはなにぞ。

【現代語訳】正月、年神をお迎えしようとして、家の出入り口の左右に立てる、いつも緑の木と竹とを組んだ飾りは何か。 【ことば】むつき=一月(正月)/年神(としがみ)=新しい年の神/むかへ(むかふ)=迎える(下二段)/たてまつら(たてまつる)=〜申し上げる(謙譲の補助動詞)/むとて=〜しようとして(む=意志)/左右(さう)=左と右/はべる=丁寧語/ときはなる(ときはなり)=一年中緑の 【ひとこと】門松は年神が来るときの目じるしなんだ。一年中緑の松は長生きのしるしだよ。

うちわ

問い夏のあつき日、姫君の手にもちてあふぎたまへば、すずしき風のおこるものあり。たけのほねに紙をはりて、たたむことなし。これはなにぞ。

【現代語訳】夏の暑い日、お姫様が手に持っておあおぎになると、涼しい風が起こるものがある。竹の骨組みに紙を張って、折りたたむことはない。これは何か。 【ことば】あつき=暑い(連体形)/あふぎ(あふぐ)=あおぐ(歴史的仮名遣い)/たまへ+ば=〜なさると(尊敬)/すずしき=涼しい/おこる=起こる/ほね=骨組み/はり(はる)=張る/たたむ=折りたたむ 【ひとこと】折りたためるのは扇(扇子)、折りたためないのがうちわだよ。扇は平安時代の日本で生まれたんだ。

除夜の鐘じょやのかね

問いおほつごもりの夜ふけて、寺々にてももやつつきならし、人のぼんなうをはらふといはるるものはなにぞ。(「〜の鐘」の形で)

【現代語訳】大晦日の夜がふけて、寺々で百八回打ち鳴らし、人の煩悩をはらうと言われるものは何か。(「〜の鐘」の形で) 【ことば】おほつごもり=大晦日(一年の最後の日)/つごもり=月の最後の日(「月隠り」から)/ももやつ=百八つ/つきならす=撞いて鳴らす/ぼんなう=煩悩(心をまよわせる欲や悩み)/はらふ=取りのぞく/いはるる(いふ+る)=言われる(る=受身) 【ひとこと】除夜の鐘の「除夜」は、古い年をのぞく夜という意味なんだよ。

年越しそばとしこしそば|そば

問いおほつごもりの夜、ほそくながきにあやかりて、いのちながかれとねがひつつくふものはなにぞ。

【現代語訳】大晦日の夜、細く長いことにあやかって、命が長くあれと願いながら食べるものは何か。 【ことば】おほつごもり=大晦日/ほそくながき=細くて長いこと(形容詞の連体形で「〜こと」の意味)/あやかる=よいものに似るようにする/いのち=命/ながかれ(ながし)=長くあれ(形容詞の命令形)/ねがひ(ねがふ)=願う/つつ=〜しながら/くふ=食べる 【ひとこと】年越しそばは江戸時代に広まった習わしだよ。そばは切れやすいので「一年の苦労を断ち切る」意味もあるんだ。

硯すずり

問い姫君の、ふみをかかむとしたまへば、御前にさぶらふ女房の、水をそそぎて墨をすりてまゐらする、石の道具はなにぞ。

【現代語訳】お姫様が手紙を書こうとなさると、おそばにお仕えする女房が、水を注いで墨をすってさしあげる、石の道具は何か。 【ことば】ふみ=手紙/かかむ=書こう(む=意志)/したまへば=なさると(たまふ=尊敬)/御前(おまへ)=おそば/さぶらふ=お仕えする(謙譲語)/女房(にようばう)=宮仕えの女性/そそぎ(そそぐ)=注ぐ/すり(する)=墨をする/まゐらする(まゐらす)=さしあげる(謙譲語) 【ひとこと】すずりの名前は「墨をする」の「すみすり」から来たと言われるよ。

鏡餅かがみもち

問いむつき、まろくひらたきもちひを、おほきなるとちひさきと二つかさね、うへにだいだいをのせて、年神にそなへたてまつるものはなにぞ。

【現代語訳】正月に、丸く平たい餅を、大きいのと小さいのと二つ重ね、上にだいだいをのせて、年神にお供えするものは何か。 【ことば】むつき=一月(正月)/まろく(まろし)=丸い/ひらたき=平たい/もちひ=餅(平安の言い方)/おほきなる=大きい/ちひさき=小さい/だいだい=みかんのなかまの果物/そなへ(そなふ)=供える(下二段)/たてまつる=〜申し上げる(謙譲語) 【ひとこと】昔の鏡は丸かったから、丸い餅を鏡にたとえたんだ。だいだいは「代々」家が栄えるようにという願いだよ。

風呂敷ふろしき

問い四角なるぬのにて、ものをつつみてもちはこぶもの。ゆどのにてきぬをつつみ、またゆかにしきしことより、この名ありとぞ。これはなにぞ。

【現代語訳】四角い布で、物を包んで持ち運ぶもの。風呂場で着物を包み、また床に敷いたことから、この名前がついたということだ。これは何か。 【ことば】四角(しかく)なる=四角い(なり=断定)/ぬの=布/つつみ(つつむ)=包む/ゆどの=湯殿(風呂場)/きぬ=着物/ゆか=床/しき(しく)=敷く/し=過去「き」の連体形/とぞ=〜ということだ(結びの「いふ」が省かれた形) 【ひとこと】風呂敷は室町時代に、大名がお風呂で着物を包んだことからこの名がついたと言われるよ。

羽根つきはねつき|おいばね

問いむつき、めのわらはども羽子板をもちて、むくろじの実に鳥の羽をつけたるものをうちあふあそびはなにぞ。うちそこなひたれば、顔にすみをぞぬられける。

【現代語訳】正月に、女の子たちが羽子板を持って、むくろじの実に鳥の羽をつけたものを打ち合う遊びは何か。打ちそこなったので、顔に墨を塗られた。 【ことば】むつき=正月/めのわらは=女の子/ども=〜たち/むくろじ=木の名(黒くかたい実がなる)/つけたる=つけた/うちあふ=打ち合う/うちそこなひ(うちそこなふ)=打ちそこなう/たれ+ば=〜したので(已然形+ば)/ぞ〜ける=係り結び(ぞ→連体形) 【ひとこと】羽根つきは室町時代からある遊び。むくろじは「子が患(わずら)わない」に通じるお守りなんだ。

梅干しうめぼし

問いむめの実をしほにつけて日にほしたるもの。いとすくして、見るだにつばきのいでくるものはなにぞ。

【現代語訳】梅の実を塩につけて日に干したもの。とてもすっぱくて、見るだけでもつばが出てくるものは何か。 【ことば】むめ=梅(平安の書き方)/しほ=塩(歴史的仮名遣い)/つけ(つく)=漬ける(下二段)/ほしたる(ほす+たり)=干した/いと=とても/すく(すし)=すっぱい(「酸し」)/だに=〜だけでも(最小限)/つばき=つば(唾)/いでくる=出てくる 【ひとこと】梅干しは昔から保存食や薬として使われてきたよ。すっぱさのもとはクエン酸なんだ。

ほうき

問いにはのおちばやちりをはきあつむるにもちゐる道具なり。さかさまにたておけば、ながゐする客のとくかへるとぞ。ふるくは「ははき」といひ、源氏の物語のまきの名にもとられけり。これはなにぞ。

【現代語訳】庭の落ち葉やごみをはき集めるのに使う道具だ。逆さまに立てておくと、長居しているお客が早く帰るということだ。昔は「ははき」と言い、源氏物語の巻の名にもなった。これは何か。 【ことば】ちり=ごみ/はきあつむる(はきあつむ)=はき集める(下二段の連体形)/もちゐる=使う(上一段)/ながゐ=長居/とく=早く(「疾く」)/とぞ=〜ということだ(結び省略)/ははき=ほうきの古い言い方/まき=巻/とられけり=取られた(る=受身) 【ひとこと】『源氏物語』の二帖目は「帚木(ははきぎ)」。「ははき」が「はうき」「ほうき」と変わったんだ。

提灯ちょうちん

問いたけのほねに紙をはり、うちにらふそくをともして夜道をてらしゆくもの。ようなきときは、たたみてちひさくなしつべし。まつりの夜にはのきごとにつるされけり。これはなにぞ。

【現代語訳】竹の骨に紙を張り、中にろうそくをともして夜道を照らしていくもの。使わないときは、たたんで小さくすることがきっとできる。祭りの夜には軒ごとにつるされた。これは何か。 【ことば】ほね=骨組み/らふそく=ろうそく(歴史的仮名遣い)/ともし(ともす)=火をつける/てらしゆく=照らしていく/ようなし(用なし)=使い道がない/ちひさく=小さく/つべし=きっと〜できる(つ=強意、べし=可能)/のき=軒/つるさ(つるす)+れ=つるされる(る=受身) 【ひとこと】ちょうちんは室町時代に生まれ、江戸時代にたためる形が広まったよ。

杵きね

問いとしのくれ、うすにむしたるもちごめをいれて、ふたりしてもちひをつくに、たかくふりあげてうちおろす木の道具はなにぞ。月にはうさぎのこれをもちてつくといひつたへたり。

【現代語訳】年の暮れ、臼に蒸したもち米を入れて、二人で餅をつくときに、高くふり上げて打ちおろす木の道具は何か。月ではうさぎがこれを持って餅をつくと言い伝えている。 【ことば】くれ=年の終わり/うす=臼(もちをつく入れもの)/むしたる(むす+たり)=蒸した/もちごめ=もち米/して=〜で(人数を表す)/もちひ=餅(平安の言い方)/つく=搗く(たたいてつぶす)/ふりあげ(ふりあぐ)=ふり上げる(下二段)/うちおろす=打ちおろす/いひつたへたり=言い伝えている 【ひとこと】臼と杵はセットだよ。月のもようをうさぎの餅つきに見たてたんだ。

お年玉おとしだま|としだま

問いとしのあらたまれるあした、わらはべのおやおほぢおほばのもとにまゐりてよろこびをまうせば、ふくろにいれたる銭をぞたまはりける。いにしへは、もちひをこそたまはりけれとか。これをなにとかいふ。

【現代語訳】年が新しくなった朝、子どもたちが親や祖父母のところに参上して新年のお祝いを申し上げると、袋に入れたお金をいただいた。昔は、餅をいただいたとかいうことだ。これを何と言うか。 【ことば】あらたまれる(あらたまる+り)=新しくなった/あした=朝/わらはべ=子どもたち/おほぢ=祖父/おほば=祖母/まゐり(まゐる)=参上する(謙譲語)/よろこび=お祝い/まうせ(まうす)+ば=申し上げると(謙譲語)/たまはり(たまはる)=いただく(謙譲語)/ぞ〜ける・こそ〜けれ=係り結び 【ひとこと】お年玉はもともと年神にそなえた餅(年魂)を分けたものだと言われるよ。

小野妹子おののいもこ

問い推古のみかどの御代、隋のくにへつかはされ、「日いづるところの天子」とかきたるふみをもちてまゐりしつかひはたれぞ。名はをんなのごとくなれど、をのこなり。

【現代語訳】推古天皇の御代に、隋の国へ派遣され、「日がのぼる所の天子」と書いた手紙を持って参上した使いはだれか。名前は女性のようだけれど、男性だ。 【ことば】みかど=天皇/御代(みよ)=治めている時代/つかはさ(つかはす)+れ=派遣される(る=受身)/いづる(いづ)=出る・のぼる(下二段の連体形)/天子(てんし)=国を治める人/ふみ=手紙・国書/まゐり(まゐる)=参上する(謙譲語)/をんな=女/ごとく(ごとし)=〜のよう/をのこ=男 【ひとこと】607年の遣隋使、小野妹子だよ。隋の皇帝・煬帝はこの国書を見て怒ったんだ。

弁慶べんけい|むさしぼうべんけい

問い五条のおほはしにて牛若丸にうちまかされ、のちにその家来となりける、おほきなる法師はたれぞ。あるじをまもりて、たちながら死にけるとぞ。

【現代語訳】五条の大橋で牛若丸に打ち負かされ、のちにその家来になった、大きな僧はだれか。主人を守って、立ったまま死んだということだ。 【ことば】おほはし=大橋/うちまかさ(うちまかす)+れ=打ち負かされる(る=受身)/ける=過去「けり」の連体形/おほきなる=大きな/法師(ほふし)=僧/あるじ=主人/たちながら=立ったまま/とぞ=〜ということだ(結び省略) 【ひとこと】弁慶の「立ち往生」は、衣川の戦いで義経を守った話として伝わっているよ。

明智光秀あけちみつひで

問いあるじなる織田殿を、京の本能寺にてうちたてまつりし武将はたれぞ。そののちわづかに十日あまりにて、羽柴殿にやぶれにけり。

【現代語訳】主君である織田殿を、京都の本能寺で討ち申し上げた武将はだれか。そのあとわずか十日あまりで、羽柴殿(豊臣秀吉)に敗れてしまった。 【ことば】あるじ=主人・主君/なる=〜である(断定「なり」の連体形)/うち(うつ)=討つ/たてまつり(たてまつる)=〜申し上げる(謙譲の補助動詞)/し=過去「き」の連体形/わづかに=わずかに(歴史的仮名遣い)/あまり=〜余り/やぶれにけり=敗れてしまった(ぬ=完了+けり) 【ひとこと】1582年の本能寺の変だよ。天下を取った期間の短さから「三日天下」と言われるんだ。

西郷隆盛さいごうたかもり

問いさつまのくにのうまれにて、江戸の城をいくさなくあけわたさせ、上野の山には、いぬをひきたるすがたの像のたちたまへる人はたれぞ。

【現代語訳】薩摩の国の生まれで、江戸城を戦いなしに明け渡させ、上野の山には、犬を連れた姿の像が立っていらっしゃる人はだれか。 【ことば】さつま=薩摩(今の鹿児島県西部)/いくさ=戦い/あけわたさ(あけわたす)+せ(す)=明け渡させる(す=使役)/ひきたる=引いている(たり=存続)/たちたまへる=立っていらっしゃる(たまふ=尊敬、る=存続「り」)/たれ=だれ 【ひとこと】1868年、勝海舟と話し合って江戸城の無血開城を決めたよ。

武田信玄たけだしんげん

問いかひのくにの武将にて、「風林火山」のはたをかかげ、ゑちごの上杉殿と、川中島にていくたびもたたかひたまひし人はたれぞ。

【現代語訳】甲斐の国の武将で、「風林火山」の旗をかかげ、越後の上杉殿と、川中島で何度も戦いなさった人はだれか。 【ことば】かひ=甲斐(今の山梨県)/はた=旗/かかげ(かかぐ)=高くあげる(下二段)/ゑちご=越後(今の新潟県)/いくたび=何度も/たたかひ(たたかふ)=戦う(歴史的仮名遣い)/たまひし=〜なさった(尊敬+過去)/たれ=だれ 【ひとこと】「風林火山」は中国の兵法書『孫子』の「疾きこと風の如く…」から取った言葉なんだ。

菅原道真すがわらのみちざね|すがわらみちざね

問いみやこをおはれてつくしへくだるとき、にはのむめに「こち吹かば にほひおこせよ」と歌よみおきたまひけり。のちには学問の神とぞまつらるる。この人はたれぞ。

【現代語訳】都を追われて筑紫へ下るとき、庭の梅に「東風が吹いたら、香りを送ってよこせよ」と歌をよみ残しなさった。のちには学問の神としてまつられている。この人はだれか。 【ことば】おはれ(おふ+る)=追われる(る=受身)/つくし=筑紫(九州。今の福岡県)/くだる=都から地方へ行く/むめ=梅/こち=東風(春の風)/吹かば=もし吹いたら(未然形+ば=仮定)/にほひ=香り/おこせよ(おこす)=送ってよこせ(命令形)/ぞ〜まつらるる=係り結び(らる=受身の連体形) 【ひとこと】歌の続きは「梅の花あるじなしとて春な忘れそ」。な〜そ=〜するなの形だよ。

宮本武蔵みやもとむさし

問いふたふりのかたなを両の手にもちてたたかふすべをあみいだせり。巌流島にてこそ佐々木小次郎と勝負しけれ。このつはものはたれぞ。

【現代語訳】二本の刀を両手に持って戦う方法を考え出した。巌流島でこそ佐々木小次郎と勝負したのだ。この武士はだれか。 【ことば】ふり(振)=刀を数える言葉/かたな=刀/両(りやう)の手=両手/すべ=方法・手だて/あみいだせ(あみいだす)+り=考え出した(り=完了)/こそ〜けれ=係り結び(こそ→已然形)/つはもの=武士・強い人(歴史的仮名遣い) 【ひとこと】二刀流は「二天一流」と言うよ。武蔵は兵法書『五輪書』も書いたんだ。

上杉謙信うえすぎけんしん

問いゑちごの武将にて、あたなるかひのくにの民の、しほなくてくるしめるをききて、しほをおくりたまひけりといひつたふる人はたれぞ。

【現代語訳】越後の武将で、敵である甲斐の国の人々が、塩がなくて苦しんでいるのを聞いて、塩をお送りになったと言い伝えている人はだれか。 【ことば】ゑちご=越後(今の新潟県)/あた=敵(「あだ」とも)/なる=〜である(断定)/かひ=甲斐(今の山梨県)/民(たみ)=人々/しほ=塩(歴史的仮名遣い)/くるしめる(くるしむ+り)=苦しんでいる(り=存続)/たまひけり=〜なさった(尊敬+過去)/いひつたふる=言い伝える(連体形) 【ひとこと】ここから「敵に塩を送る」ということわざが生まれたよ。

那須与一なすのよいち|なすよいち

問い屋島のいくさに、平家の舟にたてたる扇のまとを、なみにゆらるるをものともせず、ただひと矢にていおとしける弓の上手はたれぞ。

【現代語訳】屋島の戦いで、平家の舟に立てた扇の的を、波にゆられるのをものともしないで、ただ一本の矢で射落とした弓の名人はだれか。 【ことば】いくさ=戦い/たてたる(たつ+たり)=立てた(下二段「たつ」)/まと=的/ゆらるる(ゆる+る)=ゆられる(る=受身の連体形)/ものともせず=問題にもしないで/ひと矢=一本の矢/いおとし(いおとす)=射落とす(「射る」は「い」)/上手(じやうず)=名人 【ひとこと】『平家物語』の名場面だよ。扇は夕日にかがやきながら海へ散ったんだ。

平清盛たいらのきよもり|たいらきよもり

問いもののふとしてはじめて太政大臣にのぼり、安芸のいつくしまのやしろをあつくうやまひたまふ。「この一門にあらざらむ人は、みな人非人なるべし」とまでいはれしほど、家をさかえさせし人はたれぞ。

【現代語訳】武士として初めて太政大臣にのぼり、安芸の厳島神社をあつく敬いなさる。「この一族でないような人は、みな人でなしであるにちがいない」とまで言われたほど、家を栄えさせた人はだれか。 【ことば】もののふ=武士/のぼる=高い位につく/安芸(あき)=今の広島県西部/いつくしま=厳島/やしろ=神社/うやまひ(うやまふ)=敬う/たまふ=尊敬/一門(いちもん)=一族/あらざらむ=〜でないような(ず=打消、む=婉曲)/人非人(にんぴにん)=人でない者/べし=〜にちがいない(推量)/しほど=〜したほど 【ひとこと】『平家物語』で、清盛の妻の弟・平時忠が言った言葉として出てくるよ。

安倍晴明あべのせいめい|あべせいめい

問い平安のみやこに陰陽師として名だかく、星を見、うらなひをよくし、式神をもつかひけるといひつたへらるる人はたれぞ。花山院のみくらゐをさりたまふを、天のけしきにて知りけりと『大鏡』にしるさる。

【現代語訳】平安京で陰陽師として有名で、星を見、占いを得意とし、式神も使ったと言い伝えられている人はだれか。花山天皇が位をお去りになるのを、空の様子で知ったと『大鏡』に書かれている。 【ことば】陰陽師(おんやうじ)=占いや暦を受け持つ役人/うらなひ=占い(歴史的仮名遣い)/よくす=上手にする/式神=陰陽師があやつる精霊/つたへらるる(らる=受身)=伝えられる/院(ゐん)=天皇をやめた人/みくらゐ=天皇の位/たまふ=尊敬/けしき=様子/しるさ(しるす)+る=書かれる 【ひとこと】安倍晴明は平安時代中ごろの実在の人で、京都の晴明神社にまつられているよ。

徳川光圀とくがわみつくに|みとこうもん

問いひたちの水戸の殿にて、のちの世には、助さん格さんをともとしてくにぐにをめぐり、あしきものをこらしめけるはなしにて名だかき人はたれぞ。『大日本史』をもあませはじめたまひけり。

【現代語訳】常陸の水戸の殿様で、後の時代には、助さん格さんをお供にして国々をめぐり、悪い者をこらしめた話で有名な人はだれか。『大日本史』も編ませ始めなさった。 【ことば】ひたち=常陸(今の茨城県)/殿(との)=殿様/のちの世=後の時代/とも=お供/めぐり(めぐる)=回る/あしき=悪い/こらしめ(こらしむ)=こらしめる(下二段)/名だかき=有名な/あませ(あむ+す)=編ませる(す=使役)/たまひけり=〜なさった 【ひとこと】「水戸黄門」の黄門は中納言の中国風の呼び名だよ。本当は諸国を旅していないんだ。

坂本龍馬さかもとりょうま

問いとさのくにをぬけいでて、なかあしかりしさつまと長州とに手をむすばせ、亀山社中をもおこしけるが、京の近江屋にてうたれにける志士はたれぞ。

【現代語訳】土佐の国を抜け出して、仲が悪かった薩摩と長州とに手を結ばせ、亀山社中も始めたが、京都の近江屋で斬られてしまった志士はだれか。 【ことば】とさ=土佐(今の高知県)/ぬけいで(ぬけいづ)=抜け出す/なかあし=仲が悪い/かりし=「あし」の補助活用+過去「き」の連体形/むすばせ(むすぶ+す)=結ばせる(す=使役)/おこし(おこす)=始める・興す/が=〜けれども(接続助詞)/うたれにける=討たれてしまった(る=受身、ぬ=完了)/志士=国のために働く人 【ひとこと】国の許可なく藩を出ることを「脱藩」と言うよ。1867年に33歳でなくなったんだ。

杉田玄白すぎたげんぱく

問い蘭方のくすしにて、おらんだのふみをともがらとともにくるしみて訳し、「解体新書」としてよにいだしける人はたれぞ。のちに「蘭学事始」をもあらはしけり。

【現代語訳】オランダ流の医者で、オランダの書物を仲間とともに苦労して訳し、「解体新書」として世に出した人はだれか。のちに「蘭学事始」も書いた。 【ことば】蘭方(らんぱう)=オランダから伝わった医学/くすし=医者(平安の言い方)/ふみ=書物/ともがら=仲間/くるしみ(くるしむ)=苦労する/よ=世の中/いだし(いだす)=出す/ける=過去の連体形/あらはし(あらはす)=書いて世に出す(「著す」) 【ひとこと】1774年、前野良沢らと『ターヘル・アナトミア』を訳したよ。辞書もない中での苦労だったんだ。

葛飾北斎かつしかほくさい

問いえどのゑしにて「富嶽三十六景」をゑがき、たかくさかまくなみのむかうに、するがのくになるふじのねをのぞむ絵にて、このよにも名だかき人はたれぞ。

【現代語訳】江戸の絵師で「富嶽三十六景」を描き、高く逆巻く波の向こうに、駿河の国にある富士山を遠くに見る絵で、世界でも有名な人はだれか。 【ことば】ゑし=絵師(歴史的仮名遣い)/ゑがき(ゑがく)=描く/さかまく=波が逆さに巻きあがる/むかう=向こう(歴史的仮名遣い)/するが=駿河(今の静岡県)/なる=〜にある(存在)/ふじのね=富士の嶺(富士山)/のぞむ=遠くをながめる/このよ=世界 【ひとこと】「神奈川沖浪裏」の波は、ゴッホなど外国の画家にも影響を与えたよ。

鑑真がんじん

問いもろこしのたふときひじりにて、日の本へわたらむとしたまひしに、たびたびふねのなんにあひて、つひには御目も見えずなりたまひぬ。されどむたびめにこそわたりきたまひけれ。奈良に唐招提寺をひらきたまひし人はたれぞ。

【現代語訳】中国の尊いお坊さんで、日本へ渡ろうとなさったが、何度も船の災難にあって、ついには目もお見えにならなくなってしまった。けれども六度目にこそ渡って来られたのだ。奈良に唐招提寺を開きなさった人はだれか。 【ことば】もろこし=中国/たふとき=尊い(歴史的仮名遣い)/ひじり=徳の高い僧/わたらむ=渡ろう(む=意志)/たまひし=〜なさった(尊敬+過去)/なん=難(災難)/つひに=ついに/なりたまひぬ=なってしまわれた(ぬ=完了)/むたびめ=六度目/こそ〜けれ=係り結び(こそ→已然形) 【ひとこと】753年に来日し、正しい仏教の決まり(戒律)を伝えたよ。芭蕉も唐招提寺で句をよんでいるんだ。